自動車免許を取得する際、基本的には教習所へ通う者が大半を占める。免許を持たない者が通う自動車教習所は、公共交通機関が充実している街中にあるものだ。
しかし、今回訪れた廃自動車教習所は、何故こんな所にと言わざるを得ない辺鄙な場所に残っている。
小さな事務所
喫茶店のような建物。言われなければ、教習所の事務所だとは分からない。私自身、現地を訪れるまでは半信半疑であった。
送迎バスがあるとはいえ、山間の教習所まで通うのは骨が折れる。その分、価格設定は良心的だ。
まだまだ生徒募集中。今日は体験入学ということで、事務所と教習コースを見学させてもらおう。
事務所へ入ってみると、バッグから下半身が飛び出していた。こういった悪戯は心臓に悪い。
ブラインドから外を覗く人形。石原裕次郎※1を意識しているのだろうか。
荒れた教習コース
いよいよ本命の教習コースへ。かつてのゲートは視認困難なほど、植物に覆われている。
街中の教習所とは違い、見える景色は山ばかり。都会の喧騒から離れ、のびのびと教習に励むことが出来そうだ。
打ち寄せる波のように、盛り上がったアスファルト。
公道で見かけることはほぼ無い「警笛鳴らせ」の標識。津々浦々の廃墟を巡った私でさえ、実際に標識を見たのは一度きりだ。
閉業から10年も経っていないというのに、教習コースは荒れ放題だ。植物の生命力には驚かされる。
教習コースの中心にあたる交差点。
廃墟には、夫々残っていると嬉しいものが存在する。廃医院ならば無影灯、廃校ならば机と椅子のように、信号機が残っている廃自動車教習所というのは、非常にポイントが高い。
蔓植物が絡み付いた信号機。アート作品のようで美しい。
我が物顔で歩く野生動物に遭遇した。糞も落ちており、現在は野生動物の楽園と化しているようだ。
在り来たりな表現だが、廃自動車教習所には「人類滅亡後の世界」という言葉がよく似合う。
廃墟評価
廃墟退廃美 | A |
到達難易度 | C |
廃墟残留物 | B |
崩壊危険度 | C |
廃墟化年数 | C |
廃墟評価の詳細はこちら。
脚注
※1^ 昭和を代表する俳優、歌手。主な作品は「太陽にほえろ!」「西部警察」など。52歳没。