虫明郵便局は、岡山県瀬戸内市邑久町に残る廃郵便局である。
邑久町東端の入り江に位置する虫明集落は、古くから潮待ちや風待ちの港町として栄えてきた※1。
虫明集落
昭和5年に建てられた虫明郵便局は、古い建物が立ち並ぶ一角に残っている。傷んだ下見板張りの外壁と上げ下げ窓は、他に引けを取らない美しさだ。
「虫明」という地名は、夜の浜辺で頻繁に夜光虫が明るく輝いていたことに由来する。
岡山県は、全国でも有数の牡蠣の生産地として知られる。「天然の良港」と称されるリアス式海岸※2は、正に牡蠣養殖に適した環境であり、虫明海域だけで県全体の生産量の約4割を占めている。
古びたカーテンと上げ下げ窓。美しすぎて鼻血が出そうだ。
ガラス越しに中を覗き込むと「公衆電話室」の文字が見える。スマートフォンなど勿論無かった時代。公衆電話は、重要な連絡手段の一つであった。
受付窓口には、剥がれかけた「定額貯金」の文字が見える。見る限り、残留物には期待できないが、今後の行く末が気になる。
再訪することがあれば、次は牡蠣も味わいたいものだ。
廃墟評価
廃墟退廃美 | A |
到達難易度 | C |
廃墟残留物 | C |
崩壊危険度 | C |
廃墟化年数 | A |
廃墟評価の詳細はこちら。
脚注
※1^ 【瀬戸内市公式ホームページ-虫明焼について】
“虫明は、邑久町(現在の瀬戸内市邑久町)の東端近くに位置し、瀬戸内海に面し、しかもリアス式海岸であるため、古代・中世には風待ち、潮待ちの港町として栄え、また曙の美しさから古くから詩歌に詠まれるなど風光明媚なところとしても有名である”
https://www.city.setouchi.lg.jp/soshiki/57/3685.html
※2^ 海面上昇によって、起伏の激しい陸地が浸水し形成される海岸。波が低く穏やかなため、牡蠣などの養殖に適している。