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透明な手術台の廃診療所

閑静かんせいな住宅地に残っている廃診療所。外壁は黒ずみ、敷地内には木々が生い茂っている。

個人的にはあまりそそられないが、変わった手術台と無影灯むえいとうが残っていると聞き足を運んだ。

曰く付きの廃診療所

地域住民が使用しているのだろうか。駐車場には車が停まっている。民家に隣接し、荒らされる事も無いため、この手の廃墟にしては驚くほど状態が良い。

医療関係の廃墟は、もれなく心霊スポットとなる傾向があるが、ここは例外のようだ。

中を見てみるとその理由が分かる。診療所の面影がほとんど無いのだ。

廃診療所とは言え、分かり易い残留物が無ければ肝試しが盛り上がらないのだろう。

レントゲン室

心霊スポットでは無いと言ったが、実はこの廃診療所は、心霊スポットマニアが喜びそうないわく付きの廃墟である。

平成28年2016、廃診療所の1階の準備室から、瓶に入ったホルマリン漬けの男性嬰児えいじ2体が発見された。死後30年以上が経過し、現在も身元は分かっていない。

行旅死亡人こうりょしぼうにん※1として処理された彼らの怨念が、夜な夜な彷徨さまよっていても不思議では無いが、そんな噂を聞くことは無い。心霊スポットとなるか否かは、生きている人間の匙加減さじかげんで決まるものなのだ。

透明な手術台

手術台

残留物の少なさに飽きてきたため、目当ての手術室へ向かう。

手術室には、見たことの無い透明な手術台が残っている。透けていると、何かしら利便性が高いのだろうか。素人目には分からないことばかりだ。

手術室

閉め切られた真夏の手術室は、サウナに匹敵ひってきする暑さだ。滝のように汗が噴き出し、最早撮影どころでは無い。

手術台に映った逆さ無影灯は、この廃診療所ならではの光景だ。廃墟としても心霊スポットとしても中途半端な物件であるが、そこそこ楽しむことが出来た。

廃墟評価

廃墟退廃美C
到達難易度C
廃墟残留物C
崩壊危険度C
廃墟化年数C

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脚注

※1^ 氏名や住所が不明で、引き取り手が存在しない死者のこと。所謂いわゆる、無縁仏。

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