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春を呼ぶ廃医院

大正時代に建てられた古い建物が点在する、とある町を訪れた。

一際目立つつたに覆い尽くされた廃墟。その繁茂具合に思わず見惚みとれてしまう。

覆い尽くす蔦

季節はまだ5月。蔦はまだまだ成長し、真夏はとんでもない状態になるはずだ。

玄関の扉は固く閉ざされている。住宅に隣接するため油断は禁物である。

受付

殺風景な受付。診療に関する張り紙が残っていないのは残念だ。

廊下

廊下の朽ち方が激しい。木片や釘で怪我をしないよう、迂回うかいしながら進む。

薬局

薬局内に僅かながら漢方や薬剤が残っているが、いまいち診療科目が分からない。

日常の五心

廃医院では、このような格言を目にすることが多い。当時は流行はやっていたのだろうか。

ボンベ

ボンベが残っている。これは産婦人科の廃医院でよく目にするものだ。

スイングドア

「当院の係員以外の方は絶対に薬局内へ入らないで下さい」と注意書きがある。厳重な管理が必要な薬局が、スイングドア一つで仕切られた造りに問題がある気がする。

診察室

広々とした診察室。医院の面影は全く無い。

先程の廊下を迂回し振り返る。正直なところ、廃墟としての見所はここ以外に無い。

手術室

窓が歪み、建物の重みに耐えられなくなってきている。無影灯が残っていないのが残念だ。

2階は病室が並んでいる。床板が傷んでおり、踏み抜けば軽傷では済まない。

入院患者心得とお願い

年季が入った張り紙がたまらなく好きだ。

入院される方はお互いに秩序を守り明朗な療養生活が出来るよう特に次のことを守りましょう。

1、病室並びに身の廻りは常に清潔整頓に畄意りゅういしましょう。
2、火気には特に注意し病室内における電熱器、火鉢等の使用は必ず婦長の許可を得て下さい。
3、塵芥じんかい、汚物等は定められた場所に捨てましょう。
4、みだりに他室に入らないで下さい。
5、静粛せいしゅくむねとしますから他人に迷惑にならぬようラヂオ、テレビ放歌、髙声こうしょうをつつしみましょう。
6、診療上の事はすべて主治医又は婦長の指示に従いましょう。
7、主治医の許可なく別の治療、薬品は使用しないで下さい。
8、散歩、運動、入浴等は必ず主治医又は婦長に相談して下さい。
9、止むを得ず外泊する時は主治医又は婦長の許可を受けて下さい。
10、食事は病状に応じて作られてありますから残さぬ様にしましょう。
11、病室内での飲酒は絶対に止めましょう。
12、夜は九時に消燈しょうとうしてお休み下さい。
13、面会はなるべく午後一時から午後五時までにして下さい。又特別患者は主治医の許可を受けて下さい。
14、入院費の他は退院時又は毎月末に必ずお支払い下さい。

右の入院心得を守らず入院患者の療養の妨げとなり或いは迷惑をかける恐れのある方は退院して頂きますからあらかじめご承知ください。

今も昔も変わらず、迷惑を掛ける患者が居たようで、頭を悩ませていたのかもしれない。

病室

日当たりの良い病室。比較的、入院環境は良かったようだ。

春の風物詩

外観を撮影していると、近隣住民と立ち話になった。
廃医院は10年程前から蔦に覆われ始めたといい、さぞかし迷惑しているのだろうと思いきや、住民の口からは意外な言葉が飛び出した。

「昔は居なかったけど、春はここにうぐいすが飛んでくるようになったんだよ」そう話す住民の顔は、どことなく嬉しそうにも見える。基本的に廃墟というものは煙たがられる存在であるが、まれに良い環境の変化をもたらす場合があるようだ。

廃墟評価

廃墟退廃美B
到達難易度B
廃墟残留物C
崩壊危険度B
廃墟化年数C

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