ホテル大宮は、群馬県みなかみ町に位置する廃ホテルである。
水上温泉への玄関口、JR水上駅から徒歩僅か1分。アクセス良好の廃墟マニアには嬉しい立地だが、温泉街の関係者は景観を損ねる廃ホテルに頭を悩ませている。
駅前の廃ホテル
駅前の廃ホテルは非常に目立つ。温泉街の第一印象としては最悪だろう。
駐車場は月極駐車場として使用されているらしいが、車を見かけることは無かった。
フロントは荒れている。
ロビーには段ボールが山積みとなっている。中身は液体肥料のようだが、何故こんな所に置かれているのかは謎だ。
ホテルの案内板がある。今いる場所は丁度中間のようだ。
1階の変わった名前の風呂が気になる。最後の楽しみに取っておこう。
配管が剥き出しの廊下は歩き難い。
スキー用品のレンタルも行っていたようだ。
4階から客室を見て行く。ホテルというよりは、旅館のような客室である。
客室を埋め尽くすように羊歯が生えている。非常に美しい。
どの客室も個性があり、見ていて飽きることが無い。思ったよりも楽しめそうだ。
転落事故
ホテル大宮は、とある事故を機に閉業へと追い込まれる。
バブル真っ只中の昭和64年。宿泊客がエレベーターへ乗り込もうとしたところ、搬器が到着しておらず5階から15m下の1階へ転落、全治6ヶ月の重傷を負った。
事故の調査が行われると、エレベーターの定期点検報告書を5年間提出していなかったことが発覚する。この報告書は、年に一度の提出が義務付けられているものである。
当然、ホテルには営業停止命令が下り、その後営業を再開すること無く閉業となった。
開いたままの扉からエレベーターを覗いてみる。事故発生時と全く同じ状況である。
実際に事故が発生した階は更に上の5階で、この高さから転落して重傷で済んだことに驚きを隠せない。死んでもおかしくない高さだ。
金属泥棒の仕業だろうか。廃墟となった現在、階段の手摺が無くなり危険度が増している。
通気性が良いのか、廃墟特有の黴臭さがあまり無い。
上階へ行くにつれて、客室の朽ち方も激しくなってくる。
最上階は床の状態が非常に悪い。踏み抜きには要注意だ。
日当たりの良い小宴会場は、植物で埋め尽くされていた。崩壊が激しく危険なため、立ち入ることが出来ない。
小宴会場を後にし、4階から下を見て行く。
小さな従業員食堂。メニューが気になる。
「ご馳走様でした」と声が聞こえてきそうだ。
1階の大宴会場へ。ステージ裏の壁が崩れ、外の光が差し込んでいる。
波打った畳の上を歩くことが出来るのは、廃墟ならではの経験だ。
廃墟でたまに見かける変わった形の照明。私は勝手に「おっぱい照明」と呼んでいる。
瓦礫だらけの厨房のような場所。面白味は無い。
案内板で見て気になっていた万人風呂はすぐそこだ。
英訳は「GREAT BATH ROOM」だ。何だかカッコいい。
夢の万人風呂
いよいよ万人風呂とご対面。
見事な岩風呂の柱部分が大きな木になっている。想像以上に広く、思わず「おお~」と声が出た。
こんな所にまでグラフィティが描かれている。日付は最近のものだ。
カランは取り外されている。
大いに賑わっていたのだろうか。当時を想像しながら空の万人風呂に屈み込み、束の間の温泉気分を味わう。
水上温泉には、まだまだ廃墟が残っている。ここで満足するのは勿体無い。ホテル大宮を後にし、急ぎ足で温泉街を駆け巡ろう。
廃墟評価
廃墟退廃美 | B |
到達難易度 | C |
廃墟残留物 | B |
崩壊危険度 | B |
廃墟化年数 | B |
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