ホテル雪舟は、山口県田布施町に位置する廃ラブホテルである。
県道22号線を走っていると、和風の塀に洋風の建物のユニークな廃墟が目に入る。朽ち具合も素晴らしく、廃墟マニアであれば非常に興味を唆られる。
和洋折衷
この辺りは、交通量が比較的多い上に路側帯が狭い。車に撥ねられないように注意しよう。
塀に残る営業当時の看板。上に貼られた「料金大巾値下」の文字が、経営状況の悪化を感じさせる。
ホテルの名に使用されている「雪舟」とは、室町時代に活躍した水墨画家である。中世の城を模した建物の、どのあたりに雪舟の要素があるのかと突っ込みたくなる。
元々はその名に相応しい白壁に黒瓦の和風の外観であったらしいが、後に改装が施され現在の洋風の外観となった。
空き室状況を知らせるランプが横たわっている。僅かに見える「満」の表示が物悲しい。
敷地内には主に2種類の建物があり、城を模した2階建ての建物を本館、ゲートの向こう側の離れを別館と名付け探索を行う。
本館の至る所に設置された女神のレリーフが印象的だ。
本館と別館を分けるゲートには小窓がある。
別館
ジュース瓶のフォントに懐かしさを感じる。
太っちょのビール瓶。これは初めて見た。
別館へ続く道は宛ら森のようになり、小鳥の囀りが響いている。かつて車が通行出来ていたとは思えない様相だ。
飼育小屋のようなものがあるが、犬でも飼育していたのだろうか。
ガレージは自然に還りつつある。廃墟としては新しい部類に入るが、木々の成長速度には度々驚かされる。
別館の客室を見て行く。天井にはシャンデリアがあり、造りは豪華だ。
客室は殆どが真っ暗で、ライトが無ければ何も見えない。撮影の際は三脚が必須である。
客室は床の状態が酷い。足裏で床梁の状態を確認し、慎重に歩いて行く。例えるならば、平均台の上を歩いているような感じだ。
どの客室も個性があって非常に面白い。この客室には、揺り籠のようなベッドが置かれていた。
在客中の客室も見て行こう。
別館の客室で一番のお気に入りがここだ。神々しい女神の姿が印象に残っている。
本館
別館の探索は程々にして本館へと戻ってきた。1階がガレージ、2階が客室の造りとなっている。
無残に破壊された廃車は、ストリートファイターIIのボーナスステージを彷彿とさせる。山口県民は血気盛んだ。
本館の全ての客室には、コンセプトに因んだ名が付けられている。
その名の通り、ベルサイユ宮殿がコンセプトのようだ。柱はどちらかと言うと、パルテノン神殿のようだ。
ベルサイユの客室は数少ない明るい客室である。王冠のようなベッドで、盛り上がったに違いない。
最も有名なトランザム※1の客室。この客室のために、ホテル雪舟を訪れたと言っても過言では無い。
相変わらず客室が暗い。肉眼ではトランザムの姿は全く見えない。手持ちのライトでバウンス撮影を行い、その姿を収めることが出来た。
金色のトランザムを改造したベッドは、フロントガラスが叩き割られている。
実際に走っていた車両かどうかは定かでは無いが、雰囲気は最高に良い。営業当時に訪れてみたかったものだ。
個性的な客室はまだまだある。ここは北京城の客室である。
古代文字のようなものが描かれた独特な壁紙。これはすごい。
北京城の客室も雰囲気が非常に良かった。しかし客室は蝙蝠の巣窟と化しており、泣く泣く撮影を諦めた。
奥の客室へ進むにつれて蝙蝠が多くなってきた。帰りの時間を考慮して、この客室を最後の探索にしよう。
久しぶりの明るい客室にホッとする。歩く度に床がバキバキと音を立て、非常に耳障りだ。
電話も一々お洒落だ。随所にオーナーの拘りが感じられる。
ホテル雪舟には他にも個性的な客室がある。蝙蝠が平気な者は、撮影にチャレンジするといいだろう。
終始飽きる事無く、気付けば滞在時間が4時間を超えていた。外観も客室も楽しめるレベルの高い廃ラブホテルに、大満足の一日であった。
廃墟評価
廃墟退廃美 | A |
到達難易度 | C |
廃墟残留物 | A |
崩壊危険度 | B |
廃墟化年数 | C |
廃墟評価の詳細はこちら。
脚注
※1^ アメリカのゼネラルモーターズが生産していた「ポンティアック・ファイヤーバード」の最上級グレード車。