鳥取県岩美町に位置する岩井温泉は、1200年もの歴史を持つ山陰最古の温泉地である。頭に手拭いを乗せ、湯かむり唄を吟じながら柄杓で湯を打つ「湯かむり」という奇習が残ることでも知られる。
そんな岩井温泉を訪れた理由は、勿論温泉ではない。裏通りで静かに朽ちていく、廃校の旧校舎が目当てである。
県内最古の擬洋風建築

擬洋風建築とは、幕末から明治初期にかけて流行した、西洋建築を模倣した建築様式である。和と洋が混在する「和洋折衷」の造りが特徴として挙げられる。
明治25年竣工の岩井小学校の旧校舎は、鳥取県に現存する最古の校舎であり、最古の擬洋風建築でもある。

下見板張りの外壁、上げ下げ窓、細部にまで施された装飾の数々。
時代は違えど、これが小学校であったとは俄かには信じ難い。

大正6年、岩井小学校は新校舎へ移転となる。
移転後の旧校舎は、役場や工場など様々な用途に利用されていたという。

老朽化が進んでいるため、2階を歩く際は細心の注意が必要である。踏み抜けば徒では済まない。

旧校舎は「岩美町保護文化財」に指定されているが、保存や修繕は一切行われていない。裏側は既に半壊し、取り返しのつかない状態に陥っている。
名ばかりの保護文化財は、正しく風前の灯火である。倒壊まで、残された時間はそう長くないだろう。
廃墟評価
廃墟退廃美 | S |
到達難易度 | C |
廃墟残留物 | C |
崩壊危険度 | A |
廃墟化年数 | S |
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