興讓館天文台は、岡山県井原市に位置する廃天文台である。
興譲館高校の教員と生徒によって開設された私設天文台が、裏山で静かに朽ちている。
星を忘れた天体望遠鏡

探索の起点となる上り坂。興讓館天文台の場所は曖昧だが、ここから山頂を目指す。
脳内BGMは、BUMP OF CHICKENの「天体観測」一択である。

これまでの経験と勘を頼りに歩いて行くと、重厚な雰囲気の興讓館天文台が現れた。
生い茂った木々と錆び付いたドーム屋根が、不使用状態となって久しい事を窺わせる。

「興讓館天文台」と書かれた立派な表札。
カメラを構えると、夥しい数の蚊が纏わり付いてくるため、撮影も一苦労だ。

竣工は昭和25年。当時の学校年間予算の1割にあたる45万円が投じられた。

ドームを開閉するための車輪は錆び付き、動きそうにない。

複雑に歯車が噛み合っている。架台に張り巡らされた蜘蛛の巣は、まるで星座線のようだ。

天体望遠鏡の鏡筒には、戦争で使用された砲弾の薬莢が再利用されている。
時代を象徴するようなエピソードである。

夜空に瞬く星を見上げ、生徒たちの嘆声に包まれていた興讓館天文台。当時と変わらず天体望遠鏡は空を見上げているが、星を捉える事は叶わない。
帰路に就いても「見えないモノを見ようとして望遠鏡を覗き込んだ」というフレーズが、2日程は頭の中から離れなかった。
廃墟評価
廃墟退廃美 | A |
到達難易度 | B |
廃墟残留物 | A |
崩壊危険度 | C |
廃墟化年数 | A |
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