都会の喧騒から離れるために、私は屡々人口の少ない離島へ足を運んでいる。
このような離島には廃墟が手付かずのまま残っており、観光序でに廃墟も楽しむことが出来る。
牛島
今回の目的地「牛島」への唯一の玄関口である室積港。駐車場は少し歩いた所にある。
牛島には廃校と廃郵便局が残っており、以前から気になっていた。
室積港と牛島を結ぶ定期船「うしま丸」は、1日に3往復運航している。便数が少ないため、運航ダイヤ※1はしっかりと確認しておこう。
室積港から牛島までは約20分。思いの他揺れが酷く、帰りの便では船酔いした。
瀬戸内海に浮かぶ牛島は、山口県光市に属する周囲12kmの離島である。
平安時代に「垣島牛牧」として牛の放牧が行われていたことから、牛島と呼ばれるようになった※2。
島内には飲食店は疎か、自動販売機すら無い。現在の島の人口は約30人である。
廃屋だらけの集落を縫うように歩いて行く。今のところ、出会った島民は僅か3人だ。
かつては、パンを買いに来る人々で賑わっていたのだろうか。
閑散とした現在は、伸びた草木を風が空しく撫でていくだけだ。
集落の奥深くに、平成11年に廃止となった「光牛島簡易郵便局」が残っている。
海が見える校舎
集落の端から端まで、徒歩でも然程時間は掛からない。
牛島小中学校は島の東端に位置する。校門には夫々「牛島小学校」と「牛島中学校」の表札が確認出来る。
小さな島には似合わない立派な校舎。グラウンドは草木が繁茂し、接近は至難の業だ。
牛島小中学校は平成11年休校、平成17年に正式に閉校となった。
校舎の目の前には美しい海が広がっている。最高の環境で授業を受けていた当時の生徒達が羨ましい。
校舎の天井に有孔ボードが使用されている。俗に言う音楽室の壁で、吸音性が非常に高い。
片仮名の「ス」のような記号が廊下に書かれているが、何の為の記号なのか私にはさっぱり分からない。
窓から入り込んだ野茨が行く手を阻む。鋭い棘が服に引っ掛かり易く、廃墟マニアからは煙たがられている。
職員室は整理されている。
平成に入って閉校となったが、所々に昭和の香りが漂う。
休校が決まった年に作成したカレンダー。「最終版」の文字が物悲しい。
海が見える学校でギターの授業。想像しただけでワクワクする。
机や椅子は殆ど残っていない。元々、生徒数が少なかったのかもしれない。
上り下りする度に軋む階段がまた良い。
窓から海が見える。美しい光景を独占し、贅沢な一時を過ごす。
窓の隙間から入り込んだ植物が、鬘のようになっている。
最後の卒業式から、黒板の時は止まったままだ。大人になると涙腺が緩くなって困る。
現在の牛島からは想像も付かないが、生徒達は素敵な学校生活を送っていたに違いない。静まり返った教室に響く潮騒に耳を傾けながら、私は一人当時を偲んだ。
廃墟評価
廃墟退廃美 | B |
到達難易度 | B |
廃墟残留物 | B |
崩壊危険度 | C |
廃墟化年数 | B |
廃墟評価の詳細はこちら。
脚注
※1^ 【運航ダイヤ | 牛島海運有限会社】
www.kvision.ne.jp/~ushima-kaiun/unkoudaiya.html
※2^ 【離島・牛島-山口県ホームページ】
“島の名の由来は、平安時代に垣島牛牧(かきしまのうしのまき)として牛が放牧されていたことから「牛島」と呼ぶようになったといわれています”
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/30/14142.html