僧侶が発見したと伝えられる芦ノ牧温泉の歴史は古く、開湯は1200年以上も前に遡る。街道が開通するまでは、到達が非常に困難であったことから「幻の温泉郷」とも呼ばれていた。
同温泉に位置する現役旅館「大川荘」※1は、漫画「鬼滅の刃」に登場する無限城に酷似しているとして、近年SNSで話題を呼んだ。
幻の温泉郷
今回の目当てである元湯旅館は、渓谷の切り立った崖に張り付くように建てられている。ジブリ映画「千と千尋の神隠し」に登場する油屋を彷彿とさせるその姿は、阿賀川に架かる橋から遠目でもよく見える。
しかし、目立つ廃墟というものは、芦ノ牧温泉にとって喜ばしい事ではないはずだ。
当時は綺麗に整備されていた元湯旅館へ続く道は、すっかり自然に還っている。足場が悪いため、慎重に下へと降りていく。
ようやく元湯旅館へ到着。しかし、既に足腰にガタが来ている。
崖側から見ると、至って普通の廃旅館といった感じである。
空になった水槽の上に、当時のポスターが見える。
事務所のような部屋には、レトロなテレビが残っている。机の上には更に気になる物が。
別の廃墟でも見かけたことがあるストリップマップ。生き残っている劇場は、あと幾つあるのだろうか。
時代を感じる掃除機。現代の家電の進化を実感できる。
天井から垂れている板に当たらないように、屈みながら進んでいく。崖に張り出した廊下を踏み抜けば、命の保証は無い。
客室へ足を踏み入れると、落花生のような巨大な蜂の巣がぶら下がっていた。廃墟探索は、時期を選ばなければ痛い目を見ることもある。
パンフレットに、当時の貴重な元湯旅館の姿が載っている。
岩風呂へと続く階段。先が朽ちていて進むことが出来ない。
おばあちゃんの家にありそうな柄のポッド。どこか懐かしさを感じる。
芦ノ牧温泉のホテルや旅館は、客室から見える渓谷美を売りとしている。勿論、元湯旅館も例外ではなく、窓の外には素晴らしい景色が広がっている。
この客室も雰囲気が素晴らしい。対岸に営業中の大きなホテルが見えている。
枯れない花
元湯旅館のお気に入りの窓。花瓶に刺さった色褪せた造花に張り巡らされた蜘蛛の巣は、計算し尽くされたかのような美しさである。
色付いた木々の葉に似合わない蚊取り線香のせいで、元湯旅館の季節が夏で止まっている。
苦労して辿り着いた元湯旅館には、数ある素晴らしいホテルや旅館に引けを取らない極上のおもてなしがあった。
廃墟評価
廃墟退廃美 | S |
到達難易度 | S |
廃墟残留物 | B |
崩壊危険度 | A |
廃墟化年数 | B |
廃墟評価の詳細はこちら。
脚注
※1^ 【芦ノ牧温泉 大川荘 公式サイト】
https://www.ookawaso.co.jp/