廃医院の情報を入手し、かつて宿場町として栄えたとある地を訪れた。
市制執行により市となった現在も、武家屋敷を始めとする古い町並みが残り、ぶらぶらと歩くだけでも面白そうだ。
繁茂した木々
住宅が立ち並ぶ小路の一角に残る廃医院。繁茂した木々が、閉院からの時間の経過を物語っている。
開業は明治にまで遡り、親子2代に亘って診療を行っていたという。
受付に残る「優生保護法指定医師」のプレートは、産婦人科の医院であったことを示すものだ。
受付の裏側は散らかっている。
2階へ上がる階段が崩れかけている。下りる時に踏み抜きそうだ。
不安を感じながら何とか2階へ。奥の窓枠が外れ、隣接するビルから丸見えになっているため注意が必要である。
2階には病室が並んでいる。出産を控えた妊婦が入院していたのだろう。
レトロなテレビに時代を感じずにはいられない。
診察室は当時の状態を留めている。立地が幸いし、派手に荒らされることは無いようだ。
子宮の状態などを確認する際に使用される内診台。男性には縁が無い代物である。
単灯式無影灯
手術室には「シャリテイク」と呼ばれる単灯式の無影灯が残っている。
フランスやドイツからの輸入に頼っていた無影灯であったが、昭和5年に国内でも無影灯の製造が始まり広く普及するようになった。
無影灯とはその名の通り「影の無い照明」であり、単灯式の無影灯は中央の電灯の光をミラーで乱反射させ、患部に生じる影を打ち消す仕組みとなっている。
手術室の隅へと追いやられた保育器。愛嬌のある形が廃墟マニアに人気だ。
多くの命が誕生したであろうこの分娩室にも、崩壊の魔の手が迫っている。
壁にはキラキラとした少女の笑顔が眩しいカレンダー。薄暗い分娩室を明るく照らすように、いつまでも微笑み続けていた。
廃墟評価
廃墟退廃美 | A |
到達難易度 | B |
廃墟残留物 | A |
崩壊危険度 | B |
廃墟化年数 | B |
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