田村鉄工所は、秋田県大館市に位置する廃工場である。
明治14年金物を商う鍛冶屋兼金物屋として創業し、その後鉄工所となった。父から鉄工所を受け継いだ田村松助は、経営手腕を振るい田村鉄工所を「東北屈指の大工場」と呼ばれるまでに成長させた。
美麗なる廃洋館

重厚感のある正門に残る「田村鉄工株式會社」と書かれた表札。
廃墟マニアの間では「タムテツ」の愛称で親しまれている。

旧道沿いに突如現れる蔦を纏った洋館は、咲き乱れる藤の花も相俟って息を呑むほど美しい。
現存するこの洋館は、昭和初期に事務所として建てられたものである。

戦時中は軍需工場となり、魚雷の弾頭製造や機関砲の銃身の一次加工を行っていた。
最盛期には、約1000人もの従業員が働いていたという。

想像以上に老朽化が進み、先が長くないことを悟った私は悲しくなった。
崩落寸前の天井は、豪雪地帯の廃墟にとって余命宣告に等しいからだ。

毎日でも見たくなる美しい上げ下げ窓。紅葉の時期には、更に美しい姿を見せてくれるだろう。

作業場へと続く廊下は、瓦礫だらけで足の踏み場もない。

田村鉄工所の敷地は非常に広い。僅かに残る作業場の一部は倒壊寸前である。

作業で使用する薬品が入っていたのだろうか。

以前は事務机や椅子が並んでいたが、知らぬ間に撤去されている。

出勤時に木札を掛けるシステムだろうか。未だに働いている者も多い。

光の入り方から物の配置まで、全てが計算し尽くされたかのような美しさである。
このまま朽ちていくのは勿体無い。

応接室のような部屋は、美しく居心地が非常に良い。何時間でも居座ってしまいそうだ。

階段を上がり2階へ。床が傷んでいるため、踏み抜かないよう細心の注意を払う。

足を踏み出す度に緊張が走る。
積み上げられた書類の束は、田村鉄工所の歴史そのものである。

残り数年で、この美しい姿は見られなくなる。私は無我夢中でシャッターを切った。
令和8年現在、事務所は半壊状態で残っているが、以前の美しい姿とは程遠い。近々解体されるとの噂もあり、廃墟界隈を席巻した有名廃墟の行く末が注目されている。
廃墟評価
| 廃墟退廃美 | S |
| 到達難易度 | C |
| 廃墟残留物 | B |
| 崩壊危険度 | A |
| 廃墟化年数 | B |
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