和賀川発電所は、岩手県北上市に位置する廃発電所である。
昭和15年、企業の自家用水力発電所として稼働開始。昭和39年、発電所へ水を供給していた大荒沢ダムが、更に大型の湯田ダムの完成により水没。和賀川発電所は稼働停止を余儀なくされた。
難攻不落の神殿

その美しさを一目見ようと、多くの人々が足を運ぶ和賀川発電所は、道程が過酷なことで有名である。アクセス方法は渡河ルートと登山ルートの2通りがあり、どちらを選んでもそれなりの苦労を強いられる。
渡河ルートは比較的短時間で到達出来るものの、時期によっては川の増水や水温の低下で、渡河を断念せざるを得ない場合がある。
登山ルートは床板の無い危険な吊り橋を渡り、急斜面を登らなければならない。時間は掛かるものの、体力と度胸さえあれば状況に左右されずに到達することが出来る。

今回は渡河ルートを選び、足が千切れそうな水温の川を渡って来た。既に満身創痍である。

夢にまで見た和賀川発電所。感動のあまり言葉が出ない。
国内屈指の美しさを誇るその姿は「神殿」と称され、廃墟マニアであれば誰もが憧れる聖地と言っても過言では無い。

美しさに見惚れ、瞬きは疎か呼吸すら忘れてしまいそうだ。
発電機と地下のタービンを繋いでいた大穴に、転落しないよう注意が必要である。

朽ちた窓は、四季折々の美しい表情を見せてくれる。

廃発電所というジャンルに挑戦する際、初めに和賀川発電所を選ぶ事はお勧めしない。
その美しさ故、他の廃発電所へ足を運んでも満足出来なくなる可能性があるからだ。

和賀川発電所唯一の残留物。碍子が取り付けられた設備が残っている。

可愛らしい狆穴子に似た何か。ニョロニョロ動きだしそうだ。
巨大な鍵穴

和賀川発電所の地下へ。鍵穴に迷い込んだ小人のような気分になれる。

倒壊寸前の小屋のようなものがある。

ここで勢いよくタービンが回転していたのだろう。
水力発電に於いて、水流の運動エネルギーを機械的エネルギーへ変換するタービンは、非常に重要な役割を担っている。
サージタンク

サージタンクとは、発電機のタービンが急停止した際などに生じる、急激な水圧変化による負荷を防ぐための施設である。
恐る恐る下を覗き込んでみたが、底が見えない。高所恐怖症の私には非常にキツイ。

先程の鍵穴のような地下へと続く圧力水路。当時は、この中を大量の水が流れていたのだろう。

苦楽を共にした廃墟マニアの2人を写真に収めるため、最後に定番のポジションへ。ここへ登るための錆びた梯子が頼りなく、肝を冷やした。
様々な苦労を経て、漸く辿り着いた和賀川発電所。今日の充実した思い出は、私の死に際に走馬灯のように鮮明に蘇るだろう。
廃墟評価
廃墟退廃美 | S |
到達難易度 | S |
廃墟残留物 | C |
崩壊危険度 | B |
廃墟化年数 | S |
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