果樹園や水田が広がる長閑な田舎町。
とある有名廃墟の傍に、人知れず朽ちていく廃医院が残っていた。
灯台下暗しとは正にこのことである。
埋もれた古井戸
繁茂した草木に覆われ、道路から廃医院の姿は見えない。時期が時期だけに、ありえない数の蚊が纏わり付いてくる。
軽い藪漕ぎを経て、玄関前へと辿り着いた。
廃医院で見かけるプレートがしっかり残っている。これだけでも足を運ぶ価値はあるだろう。
敷地内に残る古井戸。囲いがあるとはいえ、廃墟の古井戸は非常に危険だ。
玄関を入ってすぐに受付を兼ねた薬局がある。
この時点で、中には何も残っていないだろうと大体の察しが付いてしまった。
案の定、綺麗に片付けられていた。
患者待合室のプレートだけが、医院であった頃の唯一の名残である。
鮮やかな菊の造花が飾られている。葬儀のイメージが強い菊は、医院と相性が悪い気もする。
診察室には、電球だけが寂しくぶら下がっている。
最奥の部屋には、医院表札が立て掛けてある。ここが医院であったことを忘れないで欲しいと、静かに主張しているかのようだ。
たとえ人々に忘れ去られてしまったとしても、私だけは忘れずに、心の奥に留めておくことにしよう。
廃墟評価
廃墟退廃美 | B |
到達難易度 | C |
廃墟残留物 | C |
崩壊危険度 | C |
廃墟化年数 | B |
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