愛媛県今治市に位置する桜井海岸は、シーズンになると多くの海水浴客で賑わいを見せる。約8kmに亘って広がる白砂青松の海岸は「日本の渚百選」にも選ばれている。
桜井海岸へ足を運んだ理由は、勿論海水浴ではない。春先の閑散とした海岸沿いに車を停め、私はとある廃墟へ歩みを進めた。
昭和のレジャーブーム

昭和30年代以降、戦後の復興を経て日本は高度経済成長期に入る。国民生活の安定に伴い、観光や娯楽への関心が高まり、空前のレジャーブームが巻き起こった。
昭和36年頃には「レジャー」という言葉が流行語となり、ハイキング、海水浴、スキーなどのアウトドアが爆発的な人気を博した。桜井海浜クラブは、レジャーブームの真っ只中に開業した海水浴客向けの宿泊施設であった。

その後のバブル崩壊や、レジャーの多様化などの社会的要因が重なり、昭和のレジャーブームは終焉を迎えた。桜井海浜クラブも例外ではなく、客足の減少により平成5年頃に閉業となった。
抑々海浜クラブとは、どのような宿泊施設なのだろうか。海の家の規模を更に大きくした宿泊施設という認識で、間違いないのだろうか。

立派な石碑が据えられているが、文字が判別できない。

トラロープで封鎖された入口から館内へ。
分厚いガラス扉が叩き割られている。悪意を持った侵入者が、後を絶たないようだ。

目的は違えど、私も侵入者には変わりない。
広い部屋の中に、展示ケースのようなものがある。何か展示されていたのだろうか。

緑色のガラス扉から奥へと進む。

人為的な破壊に加え、吹き付ける潮風が建物の劣化を著しく早めているようだ。

非常に眺めの良いオーシャンビューの大浴場。海水浴客から、裸が丸見えのような気がする。

昭和の時代には「男尊女卑」という価値観が、根強く残っていた。
古い廃旅館や廃ホテルの大浴場は、男湯は広く女湯は狭く造られていることが多い。

老舗旅館のような和風の客室が並ぶ。

日頃の鬱憤を晴らしているのだろうか。壁が破壊され、全ての客室が繋がってしまっている。

一番奥へ進むと、宴会場のような空間が広がっていた。

身包みを剥がされた座布団が散在している。

割れた窓ガラスが満遍なく散らばっており、足音を立てずに歩くことは不可能に近い。

行き止まりの非常出口。引き返しながら余韻に浸ろう。

嘗ての賑わいを、懐かしむように佇む桜井海浜クラブ。待ち焦がれた夏が、もうすぐやって来る。
荒れ果てた建物とは対照的に、海岸には今も変わらず穏やかな潮騒が響いていた。
廃墟評価
| 廃墟退廃美 | B |
| 到達難易度 | C |
| 廃墟残留物 | C |
| 崩壊危険度 | B |
| 廃墟化年数 | B |
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