かつて、鶴岡駅から湯野浜温泉駅間の12.3kmを結んでいた庄内交通湯野浜線。
最盛期には、善寳寺の参拝客や湯野浜温泉の観光客で賑わいを見せたが、自動車の普及により利用客数は減少。昭和50年、湯野浜線は廃線となった。
善宝寺駅
鶴岡駅から数えて5つ目の駅にあたる善宝寺駅。立派な駅舎は、目の前に位置する善寳寺をモデルとしている。
湯野浜線の廃線に伴い、善宝寺駅は廃止となった。しかし、3年後の昭和53年、善宝寺駅は駅舎を再利用した展示施設「善宝寺鉄道記念館」として生まれ変わる。当時、湯野浜線の資料や保存車両を展示していた。
入口から既に展示されていた車両が見えている。なんてワクワクする眺めだろうか。
庄内交通モハ3形
順風満帆に思えた善宝寺鉄道記念館であったが、駅舎の老朽化や入場者数の減少により、平成11年に再び閉館となる。開館から21年、2度目の悲劇であった。
閉館から雨曝しのままの車両は、取り返しがつかないほど傷んでいる。一度は保存が決まり、大切に扱われていただけに非常に残念である。
駅名標を模した案内板がある。小さな遊び心は非常に喜ばれたことだろう。
ホームに車両がそのまま残っている廃駅は、全国的に見ても非常に珍しい。流石は有名廃墟といったところか。
車両内部には入れないと思っていたが、ドアが外れている。これは嬉しい誤算だ。
車両内部へ。車掌へ挨拶をしてみたが、見向きもされない。
吊革や座席が営業当時のまま残っている。
朽ちた車両というものは、やはり素晴らしい。小さな閉鎖空間に、廃墟が持つ美しさが凝縮されている。
どこからか視線を感じる。車両後方にも誰かがいるようだ。
これは心臓に悪い。
ホームに蒸気機関車の動輪が展示されているが、動輪だけを見てもいまいちピンと来ない。
ホームに残る待合室のような建物。施錠されていたため、中を見ることは出来なかった。
車両側面に「モハ3」の文字が見える。それにしても錆が酷い。
令和4年、湯野浜線で唯一残っていた駅舎の解体工事が行われた。これにより、湯野浜線の駅舎全てが姿を消したこととなる。ホームに残された車両の解体は、現時点では未定である。
かつての湯野浜線の存在を証明するものは、今や残された車両だけとなってしまった。
廃墟評価
廃墟退廃美 | S |
到達難易度 | C |
廃墟残留物 | A |
崩壊危険度 | C |
廃墟化年数 | B |
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