儚く美しい廃墟の世界を紹介するサイト。廃景へようこそ!

昭和27年1952、石油の採掘中に突如温泉が湧き出した。それ以来、この地は「森岳温泉郷もりたけおんせんきょう」と呼ばれ、長らく「秋田の奥座敷」として親しまれてきた。

国内でも有数の塩分濃度を誇る温泉は、しょっぱい温泉※1として有名である。

森岳温泉郷

丸富ホテル

昭和30年1955創業の丸富まるとみホテルは森岳温泉の中央に位置し、小さな温泉郷には場違いなほど巨大である。

平成24年2012、運営母体の「丸富観光」は2度目の不渡りを出し、事実上の倒産となった。丸富ホテルは閉業、負債総額は約9億円であった。

地上9階建て、全71室、319人宿泊可能な巨大廃ホテルの姿は、今や閑散かんさんとした森岳温泉の繁栄はんえい衰退すいたいを一度に見せられているかのようである。

ロビー

剥がれた天井のクロスが垂れ下がっている。廃ホテルならではのおもてなしに心がおどる。

今回は、世話になっている東北地方の友達「廃墟ちゃん」との合同探索である。

フロント

合同探索と言いつつ、館内では別行動でほぼ顔を合わせることは無い。お互い自由に廃墟探索を楽しんでいる。

案内板

冒頭で紹介した通り丸富ホテルは巨大である。館内は3つのエリアに分かれ、迷宮のようになっている。各階の繋がりを把握するには時間を要する。

なまはげ

秋田といえば「なまはげ」が有名である。
廃墟探索真っ最中の私達には「悪い子はいねぇがー」という台詞せりふが刺さる。

売店

日当たりのいい売店は苔生こけむして美しい。ついつい引き寄せられてしまう。

秋田の恋人

「〇〇の恋人」という商品は何処に行っても見かけるが、プライドは無いのだろうか。

ロビー

ロビーだけでもかなり広い。ここが朽ちてくれると画になりそうだ。

フランス人形

ロビーの奥にあるクラブへ。可愛いフランス人形が出迎えてくれる。

クラブ リッチ

静まり返ったカウンター。当時の賑わいが想像出来ない。

悪戯いたずらで消火器が撒かれている。中身がピンクというのは意外と知られていない。

客室

先程のクラブの上階にあたる石倉亭エリアの客室。軽く掃除をするだけで宿泊出来そうだ。

先人の足跡がくっきり残っている。

和室が付いたワンランク上の客室。綺麗過ぎて廃墟としては全く面白くない。

レストラン

レストランに期待していたが、日当たりが良いおかげで全く朽ちていない。ここが苔生していれば最高なのだが。

フロントへ戻り、この階段から羽衣亭エリアの結婚式場とコンベンションホール※2へ向かう。先程とは違い、退廃美に期待出来そうだ。

階段

上階へ向かう階段は、思わず溜め息が出てしまう程の美しさだ。一瞬でとりこになってしまった。

しかし、瓦礫が降り積もった階段は非常に歩きにくい。おまけに苔生している箇所は滑るため、注意が必要である。

変わった形の照明と苔が、コンパクトで美しい廃空間を演出している。

排水管が壊れているのか雨漏りが酷い。溜まった湿気のせいで、この辺りは傷みが激しいようだ。

机と椅子が並べられている。この辺りがコンベンションホールだろうか。空気が悪いため早々に撤退する。

通路誘導灯

天井が壊れ、通路誘導灯が床に着いてしまっている。

次は宴会場を見て行く。宴会場には全て植物の名が付けられている。

宴会場前は朽ちているが惜しい。数年後どうなっているか楽しみだ。

手前の「芙蓉ふよう※3の間」を見て行く。

水車

脇の水路には水車まである。当時は実際に水が流れていたのだろうか。

芙蓉の間

腐った畳の上を歩く。ふわふわとした感触が病み付きになる。

さらに進むと宴会場「かえでの間」と「呉竹くれたけの間」がある。

呉竹の間

呉竹の間は、ホテル中の備品で埋め尽くされていた。

廃墟では当たり前だがエレベーターが使用出来ない。移動は全て階段となるため、巨大な廃ホテルは疲れる。

客室

レストラン同様、客室も期待外れである。

期待外れの客室が多い中、とんでもない客室を発見した。火災で焼け焦げている訳では無く、かびによって客室全体が黒くなっている。

日当たり次第でここまで違うのかと驚かされる。

吐き気をもよおすレベルで空気が悪い。

親切な案内板に従って大浴場を目指す。

大浴場

大浴場

ガラスが割れ、植物が入り込んだ開放的な大浴場。中央の丸いオブジェが気になる。

大浴場は男女の入れ替えがあり、どちらも楽しむことが出来た。

源泉

飲めば長生き出来るとうたっていた源泉。丸富ホテルが廃墟と化した今、効能の説得力は皆無だ。

露天風呂

露天風呂の中を喇蛄ざりがにが元気に泳ぎ回っている。それにしても狭い。

森岳パレスレーン

ゲームコーナー

宿泊エリアを後にし、以前から気になっていた森岳パレスレーンへ。手前には小規模なゲームコーナーがある。

UFOキャッチャー

ワクワクBOXの中には、どのような景品が入っていたのだろうか。

エアホッケー

ゲームセンターではお馴染みのエアホッケー。卓球台もあれば完璧だ。

森岳パレスレーン

多少荒らされているが、目立った損壊も無く状態は良い。廃ボウリング場は数が少なく、非常に貴重なものである。

トロフィー

きらびやかなトロフィーが手付かずのまま残っている。

最後の大会のスコアだろうか。中々ハイレベルな戦いだ。

料金表

ゲーム料金は一般的なボウリング場と変わらない。

ボウリングシューズ

ズラリと並ぶボウリングシューズ。余談だが、ボウリングが好きな私は一時期マイシューズを持っていた。

ボールラック

ボールの数がやたらと少ない。

ボウラーズベンチ

レトロな雰囲気が残るボウラーズベンチ。雰囲気だけでなく、残っている機械もまたレトロだ。

現在のボウリング場はオートスコアラーの導入により、スコアの計算が自動化されている。しかし、一昔前までスコアの計算は、ボウラー自身による手書きが主流であった。

スコアシートをずれない様に挟む。

プロジェクター

プロジェクターでスコアシートを読み取り、頭上のスクリーンへ投影する仕組みであった。

ボールリターン

他の機械は丸々残っているが、ボールリターンのラックだけが取り外されている。

ポスター

昭和45年1970、女子プロ初の公認パーフェクトゲームを達成した中山律子は、昭和のボウリングブームの火付け役である。

かつて全国に4000近くあったボウリング場は、ブームの終焉に伴い4分の1にまで減少してしまった。

レーン

森岳パレスレーンは全8レーンのボウリング場であった。ピンがはじける心地良い音が響くことはもう無い。

ピンセッター

ボウリングのピンを並べる機械は「ピンセッター」と呼ばれる。ボウリング場で働いた経験が無い限り、ピンセッターを間近で目にする機会は無いだろう。

ボールが投げ込まれている。皆考えることは同じだ。

ベンチ

最後に屋外プールを見て行く。黴臭い館内からようやく解放され、空気が美味しい。

プール

廃墟ちゃんを待たせているため、足早にプールを見て行く。感想としては至って普通だ。

思い思いに丸富ホテルを堪能し、気付けば4時間が経過していた。この後は美味しい焼き肉が待っている。

人間の遺体を発見して以降、廃ホテルを敬遠していたが、今回の探索を機に廃ホテルの良さを再び実感することが出来た。

廃景

遺体を発見した廃ホテル。…

廃墟評価

廃墟退廃美A
到達難易度C
廃墟残留物A
崩壊危険度B
廃墟化年数C

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脚注

※1^ 【森岳温泉郷 森岳温泉ホテル】
“森岳温泉の泉質は、日本屈指の「しょっぱい温泉」。濃度が高めであることから、身体への浸透率も高く、体の芯から温まります”
https://moritakeonsenhotel.com/hotspa/

※2^ 展示会や会議を行うための施設。国内では会議場を指す場合が多い。

※3^ アオイ科フヨウ属の落葉低木。

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