天方小学校嵯塚分校は、静岡県の中塚集落に位置する廃校である。
創立は明治23年。昭和52年から長らく休校となっていたが、平成2年に正式に閉校となった。
まるで撒菱のような落石だらけの細い山道をひたすら走り精神を削られた後、徒歩で廃集落の更に上に位置する廃校を目指す。嵯塚分校へのアクセスは、肉体的にも精神的にも非常に疲れる。
中塚集落
現在は徒歩でしか近づけない中塚集落も、かつては車が走っていたようだ。
車を停めたポイントから、10分程歩いたところで中塚集落が見えてくる。ここまでは序の口である。
数年前に最後の住人が居なくなり、中塚集落は廃集落と化した。
廃屋を見て回りたい衝動を抑えつつ、上へ続いていそうな道を探し進んでいく。
中塚集落から山道を歩くこと更に15分。
汗だくになりながら、ようやく嵯塚分校へ辿り着いた。最早、廃校などどうでもいいと思うほど疲れている。
校舎から歩いてきた道を振り返る。日没まで1時間を切っているというのに、とんでもない山奥まで来てしまったようだ。
小さな校庭には神社が残っている。管理されている様子は無い。
平屋建ての校舎に職員室と教室が2つ。裏手には教員宿舎のような建物も残っている。最盛期には、約50人の生徒が通っていたというから驚きである。
職員室には、しかめっ面の先生たち。あまり歓迎されていないようだが大丈夫だろうか。
分校ということもあり、教室は非常に小さい。
遠い北海道の地について学んでいる途中だ。
デッサン用の果実の模型だろうか。
大した娯楽など無くとも、自然豊かな山奥の分校は楽しいことが溢れていたはずだ。
蝶と地球儀
先程の教室の隣には、学校の備品が集められている。
この教室に、今回の目当てのものが眠っている。
わざわざ、とんでもない山奥まで足を運んだ理由。それが、この蝶が飛び交う地球儀である。
嵯塚分校を訪れる者の大半が、この地球儀が目当てだと言っても過言ではない。
私自身、この地球儀を一目見ようと訪れた者の内の一人である。
教室を見て回っていると、何だか物音が聞こえてくる。すると、驚くことに教室の隅に野生の鹿が隠れていた。
野生動物にとって、隠れやすい廃墟は安全な場所なのだろう。
滴る水をいつから受け続けているのだろうか。床は既に手遅れのように見える。
残りの時間を気にしつつ、急ぎ足で見て回った嵯塚分校。ライトが無ければ何も見えない程、辺りは暗くなってしまった。
窓から入る僅かな光に照らされた地球儀は苦労の甲斐もあり、この上なく美しく思えた。
廃墟評価
廃墟退廃美 | A |
到達難易度 | S |
廃墟残留物 | A |
崩壊危険度 | B |
廃墟化年数 | A |
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