伊吹山は滋賀県と岐阜県に跨る標高1377mの山である。滋賀県の最高峰としても知られる。
伊吹山ゴンドラは山麓から三合目までの1442mを8分で結び、かつて存在した「伊吹山スキー場」を訪れるスキーヤーやスノーボーダー、登山客などに利用されていた。
山麓乗り場
山麓に残るゴンドラ乗り場。状態が良いため、廃墟には見えない。
スキー場の閉鎖後も夏季限定の季節運行を続けていたが、平成23年の運休を機に運行が再開されることは無かった。
錆び付いた運行状況の案内板。スキー場が営業していた頃は、伊吹山ゴンドラの他に複数のリフトが運行していた。
以前は自家用車で三合目まで通行出来た。しかし不法投棄が後を絶たないため、現在は関係者以外の車両の通行は制限されている。
三合目まで登山をする体力と時間の余裕は無い。ここからはタクシーに乗り三合目を目指す。往復5000円は手痛い出費だが仕方が無い。
三合目乗り場
タクシーに乗って楽々三合目へ。迎えの約束をして、運転手とは暫しのお別れだ。
到着してまず目に入る廃ホテル。詳しくは別記事「伊吹高原ホテル」で紹介する。
伊吹高原ホテルに隣接する三合目乗り場。外壁のトタンが剥がれ、骨組みが露わになっている。
チケット売場の案内板を見てみよう。
最後まで運行を続けていた伊吹山ゴンドラに〇が付いている。
伊吹山スキー場は、業績不振により平成17年に閉鎖となる。その後「ピステジャポン伊吹」と名称を変え営業を再開したが、再び閉鎖となった。
チケット売場に様々な物が押し込められている。
スキー場の閉鎖に伴いリフトは全て撤去されているが、ゲレンデの跡や方向看板など、当時の面影が僅かに残っている。
反対側から見たゴンドラ乗り場。逸る気持ちを抑え周辺を見て回る。
錆びてはいるが、ワイヤーを支える支柱はまだまだ使用出来そうだ。
いよいよ乗り場の中へ。ゲレンデの立て札が残っている。
ゴンドラ乗り場の1階は、スキーやスノーボードの道具で溢れ返っていた。スキー場があった当時にレンタルしていたものだろう。
ボードも使用出来そうなものばかりだ。非常に勿体無い。
バーゲンセールのようにスキーブーツが積み上げられている。
搬器の墓場
急な階段を駆け上がり、いよいよゴンドラ乗り場へ。そこには圧巻の光景が広がっていた。
整然と並ぶ近未来デザインの搬器。デザイン担当は鳥山明※1だと言われても違和感が無い。
巨大な歯車は廃索道ならではの光景だ。
外壁の剥がれかけたトタンが強風で打ち付けられ、あたかもゴンドラが運行しているかのような音が響いている。廃墟は基本的に無音のため、騒々しいと廃墟に居る感じがしない。
吹き込む強風で、ゆらゆらと搬器が揺れている。
搬器の総台数は68台にも及ぶ。まるで合わせ鏡を見ているかのようだ。
扉が開いていた搬器を覗いてみる。搬器内には無線機や室内灯が見える。定員は6名で、背中合わせに3名ずつ座ることが出来た。
普段であれば立ち入ることの出来ない場所から搬器を見下ろす。廃墟自体立入禁止なのだが。これも廃墟探索の醍醐味の一つだ。
帰りのタクシーで廃墟を見てきたことを伝えると、運転手は愚痴を溢し始めた。まだ使用できるゴンドラを放置している現状、伊吹山の観光を盛り上げようとしない地元への憤り。私は静かに相槌を打つ他無かった。
廃墟評価
廃墟退廃美 | B |
到達難易度 | A |
廃墟残留物 | S |
崩壊危険度 | C |
廃墟化年数 | C |
廃墟評価の詳細はこちら。
脚注
※1^ 日本の漫画家。代表作は「Dr.スランプアラレちゃん」「ドラゴンボール」など。