屋島ケーブルは、香川県高松市に位置する廃ケーブルカーである。
「屋島ケーブル」という名称は、正式な路線名ではなく通称である。屋島登山口駅から屋島山上駅までの高低差265 m、路線距離858 mを結んでいた。
屋島唯一の動力登山手段

開業は昭和4年。レトロな雰囲気が漂う駅舎は、平成21年に経済産業省の「近代化産業遺産」に認定されている。
自動車専用道路「屋島ドライブウェイ」が開通する昭和36年までは、屋島唯一の動力登山手段であった。

徒歩で1時間を要する距離を僅か5分で結んだ屋島ケーブルは、開業後大いに賑わいを見せた。
しかし、屋島観光の衰退や施設の老朽化、モータリゼーションによる利用客の減少が重なり、平成16年に運行を休止。翌年の平成17年、屋島ケーブルは廃止となり、運行が再開されることはなかった。

多くの利用客が行き交っていた扉は、固く閉ざされている。
時折、隣接する公衆便所の利用者が駅舎内を覗き込んでくる。しかし、息を殺した私の存在に気付くことはない。

嘗ての喧騒は忘れ去られ、静寂が駅舎を支配する。

役目を終えたアーケードゲームの筐体は、猫たちの恰好の遊び場となっている。

屋島ケーブルは毎時15分、35分、55分の20分間隔で運行されていた。

雑然とした運転室には、油のような臭いが漂っている。

「クモは教わりもしないのに巣のはり方を知っている」
美しい蜘蛛の巣が目に入り、私の好きなある漫画の台詞が脳裏に浮かんだ。

登山口駅の駅員と、連絡を取り合うための通信装置だろうか。

運転室から、山麓へと伸びる軌道を望む。
普段は絶対に立ち入ることの出来ない場所である。

改札口を抜け、愈々ホームへ。思わず身構えてしまうほどの急勾配である。

搬器の2号車に当たる「辨慶号」は、屋島ケーブルの廃止後も山上駅に留置されていた。因みに1号車の名は「義経号」である。
地震などの災害時に搬器が滑落する恐れがあるため、平成25年に辨慶号は登山口駅まで引き下ろされた。

廃墟マニアの中には、山麓から軌道を徒歩で登ってくる強者もいる。私には、そのような体力も時間も無い。
そして山上駅に夢中になるあまり、登山口駅に留置されている搬器の写真を撮り忘れていた。香川へ再び足を運ぶことがあれば、次こそは義経号と辨慶号に会いに行こう。
廃墟評価
| 廃墟退廃美 | A |
| 到達難易度 | C |
| 廃墟残留物 | B |
| 崩壊危険度 | B |
| 廃墟化年数 | B |
廃墟評価の詳細はこちら。