羽幌炭砿は築別炭砿、羽幌本坑、上羽幌坑の3鉱区の総称である。羽幌の名は「広大な川の流域」を意味するアイヌ語「ha–poro–pet」を語源とする※1。
羽幌炭砿鉄道病院の診療科科目は内科、外科、婦人科、耳鼻科、レントゲン科と多岐に亘り、全盛期の羽幌炭砿を支える重要な病院であった。
崩れ落ちた廃病院

相沢川を挟んで向かい側に、廃アパート群「羽幌炭砿アパート」が見えている。当時の住人たちも、羽幌炭砿鉄道病院を利用していた筈だ。
開院は昭和19年。診療を行っていた当時の写真を見てみると、周辺には複数の病棟が存在していた。唯一残っている病棟は、まるで空爆でも受けたかのような酷い様相だ。

辛うじて病院の雰囲気が感じられる。医療設備が充実した羽幌炭砿鉄道病院であったが、現在は蛻の殻である。

受付のような小窓がある。何も残されていないため、どのような部屋であったか分からない。

長年に亘って羽幌炭砿の従業員や家族、周辺の人々の健康を守り続けてきた病院の成れの果て。炭鉱で発展した町は、例外無く同じ運命を辿るものだ。
危険な濁水

困ったことに、奥へ進もうにも床はご覧の有様。
そして、この濁水に私は見覚えがある。屈強な挑戦者達が鋼鉄の魔城の完全制覇を目指すアレだ。
今回は絶対に落水する訳にはいかない。瓦礫や錆びた釘が沈んだ濁水の中で怪我をすれば、破傷風に感染する可能性が高いからだ。

美しく朽ちた階段を撮影したいところだが、接近は困難を極める。完全制覇は諦めるしかないようだ。
危険な状況の先に、たとえ美しい光景が待っていようとも、取り返しの付かない事態を招いてしまっては元も子もない。廃墟という特殊な空間では、何よりも引き際が大事なのだ。
廃墟評価
廃墟退廃美 | A |
到達難易度 | B |
廃墟残留物 | C |
崩壊危険度 | S |
廃墟化年数 | A |
廃墟評価の詳細はこちら。
脚注
※1^ 【羽幌町ホームページ-まちのあゆみ】
“大海に注ぐ『流出広大ノ川』はアイヌ語でハポロぺツと呼ばれていました”
https://www.town.haboro.lg.jp/about/ayumi.html